墨成

編集後記(2024年12月)

▼夏の暑さが長く続いた後に一気に冬が到来したかのような気候。時の流れに任せて日々を過ごしてきた身にとっては人生の冬も一気に来るのだと自覚を促されました。折しも高校課題『蘭亭序』は「古人云死生亦大矣」と、王羲之の書と共にこれから佳境に入ります。

▼後期昇段試験で教育部門での優秀作に選ばれた方々は、書に対して真摯な意思を持ち、強い意志で貫いています。十代の上り坂を地に足をつけて己を見つめています。文字は誰でも書けますが、誰しもが筆で文字を書くことを為してはいません。「書がほんとにわかれば絵画も彫刻も建築もわかるはずだ。そうしてその眼は人生の機構そのものさえ見ぬいてしまう力を持っている」と、高村光太郎は喝破しています。

▼空海は「書は散なり」と説きました。空海にとって書は邪念を払う為、精神の毒を消すための格好の手段だったのかもしれません。書くことによって邪念や毒を抽象化する。天才空海のなせる業でしょう。

▼8000年前の人の寿命は20歳だったそうですが、未来はAIや医療の進歩で人類の寿命は500歳まで伸びると、ある発明家は予想しています。冬をどのように生きるのか。何を、どのようにして未来にバトンを繋ぐのか。暖冬の今、しみじみ考えさせられます。

(神原藍)