
編集後記(2026年3月)
▼米書研会長生田博子先生が、本年一月にご逝去されました。日本の伝統文化を学び、渡米後は書道と茶道を伝える活動を続けられました。日本文化を発しながら異文化の地でご家庭を築かれましたが、想像を絶するご苦労があったことでしょう。その歩みは、今の多文化共存の時代を支える“相互文化の尊重”の体現者そのものでした。
▼博子先生の歩みを振り返ると、石川啄木の「こころよく我に働く仕事あれ それを成し得て死なんとぞ思ふ」の一首が思い起こされます。啄木の仕事は単なる労働ではなく、誇りと使命をかけて向き合うものを指していました。博子先生もまた日々の「作業」を積み重ねながらも、その先にある“人を育て文化を繋ぐ”という誇りと使命を胸に歩まれていたと感じます。「働く」の人偏が示すように、温かな“人への眼差し”をお持ちでした。
▼知的好奇心と知識欲、歴史への深い関心を湛えながら、晴れ舞台の凛とした着物姿も、日々の実直な働き着も、どちらも自然に纏われていた博子先生は、両方を美しく着こなす稀有な方でした。
▼生涯を通じて日本文化を継承し、発展させ、日米の架け橋として尽くされた博子先生。その足跡は、海外で活躍する日本人の魁としても、多くの人の心に息づいていくことでしょう。
▼謹んでご冥福をお祈り申し上げます。(神原藍)