墨成

編集後記(2023年7月)

▼小学高学年からの作品が一段と輝いてきました。継続は力なりと言いますが、動機は何であれ自分の意志で続けているということが大きいのではないでしょうか。有段課題の漢字は、自らで選んだ言葉を深い呼吸で運筆した線がありました。自分の成長を自分で育むことが出来るのも書の魅力の一つであることを認識したのです。

▼人間は死ぬ直前までインプットとアウトプットを続け、それは生物としてだけではなく人間関係や組織、或は一人の人生に於いても、新陳代謝があり、流れがあり、自己組織化をはかっていると言われています。

▼今回の昇段級試験では準師範以上に挑戦された方も少なくはありませんでした。が、もっと自分の心を見つめて、自己をさらけ出すような作品を書かれても良いのではないでしょうか。書学は際限がなく、行けども行けども青い山を登るような気持ちになりますが、自分の真実や苦悩、喜びが表現出来れば、幸せへの自己組織化が計れると信じます。

▼「誰の心にも、自分を破壊させたいという願望の種が存在する。それを育つがままに放置すれば、不幸という実を結ぶことになる」とアメリカの作家、ドロシア・ブランドは言います。それとは逆に自分を幸せにしたいという願望は確かに存在します。書を学ぶという事は幸せを呼び込みたい、という願望の顕れに違いありません。 (神原藍)