墨成

編集後記(2023年2月)

▼三年に亘るコロナパンデミック、ロシアによる戦争は世界に暗い影を落としています。コロナによる後遺症も報道だけではなく、身近で闘っている方もおられます。実際、親しかった友があの世に旅立ちました。戦争による影響もエネルギーや食糧の問題のみならず、暴力的な犯罪が増えていることも、その後遺症でしょうか。

▼けれども今の不安な時を、想像力で捉えて越えようとされた作品が寄せられました。新春展に出品された桜井知子さんの作品は、丸い構成の中に一本の柱を立て、世界中の絆、人類の絆を訴える意思を感じました。人間力と想像力で困難を越えていきたいという願いが込められています。想像力は現実を超えてゆきます。百年に一度、千年に一度ということは、それを超えてきた人類の歴史があることでもありましょう。

▼生田博子先生は「一向に収束しないコロナ禍の中で毎月の月例作に心身の安らぎをおぼえるという皆さんの声に私も励まされての幸せ」とお手紙にありました。池田峯泉先生は「続けることに自分が保たれる。自分らしく生きてこられた」と寄せてくれました。その言葉に私自身も励まされています。

▼徳川家康は「文をもって天下をおさめる」をモットーに学問をすすめ、イギリス・オランダとの自由貿易を認めていたそうです。人間の叡智や想像力に期待するばかりです。(神原藍)